横浜元町商店街の真ん中にあるオーガニックカフェ&ダイニング「きせきの食卓」。
ENOTECAとHENCKELSの間にある階段をのぼった三階にあり、階段ののぼり口にある立て看板が目印。隣にはYOGAスタジオYOGA2016が併設されています。
立て看板には美味しそうな和定食の写真があり、お椀から湯気がのぼってきそうに思えます。ほっとできる健康的で温かなご飯が食べられそうだと期待して、訪れてみることにしました。
来てくれてありがとう
3階に上がり、店内に入ると「寒いなか、お越しいただいてどうもありがとうございます」と優しい笑顔の男性スタッフさんがお出迎え。ここきせきの食卓を運営する株式会社BEL-CIELOから、お店のお手伝いに来ていた山崎さんです。
いらっしゃいませではなく「来てくれてありがとうございます」。
その言葉に、お店の姿勢と温かい気持ちがあらわれているような気がしました。
遠くから声をかけるのではなく、ひとりひとりの傍まで来て声を掛け、とても丁寧な接客で席まで案内してくれます。冷たいお水が苦手なご高齢の方にはお水の代わりにお湯を出していたり、お客様に合わせた優しい心遣いが見えました。
店内入り口にはレジカウンターがあり、その横には自然食材を使った手づくりのデザートが並ぶショーケース。上には、お店で使用しているという、無添加天然醸造味噌やわじまの海塩、無農薬緑茶やオーガニックドライフルーツなどが置かれています。
その奥にも、木造りの棚にオリーブオイルやオーガニック食材などが陳列されていて、食事をして気に入った食材は購入して帰ることができます。
広々とした店内は、白一色で清潔感のある壁に、自然のぬくもりを感じる木目調のフローリング。明るめの照明と、なんといっても開放的で大きな窓が印象的です。
窓から差し込む自然光と木づくりのテーブル、優しいアースカラーの椅子が、ほっと落ち着ける癒やしの空間を作り出しています。
丸い木造りのテーブルの4人席が3つ、その横の壁面にカウンター席が6席。
この日は団体予約のため、奥には8人掛け仕様になったテーブルが2つ。
更にその奥には、可愛いクッションが飾られている、ゆったりとしたソファー席が2つ。絵本棚と子どもが座って遊べるプレイマットを見守るように配置されています。
これなら小さなお子様連れでも安心。プレイマットの上で遊んだり絵本を読んだりしながら、ママも一緒に美味しいランチを楽しむことができます。
自分がご飯を作ることが多いママも、誰かが手間ひまを掛けて手作りしてくれた心のこもったご飯をたまには食べたいと思うでしょう。そんな時にも安心して小さなお子様と一緒にランチが楽しめます。
カウンター席には女性客が多く、一人でも気軽に利用できる、静かでゆっくりと落ち着ける雰囲気です。
きせきの食卓は、2016年12月に隣接するヨガスタジオとともにオープンしました。
ヨガスタジオを運営するBEL-CIELOのオーナー内野さんご夫妻とメインインストラクター奥村さんの三人が、「ヨガでお客様の心と身体をほぐしても、日常の生活習慣がストレスフルだとすぐに逆戻りしてしまう」「インストラクターも食事を疎かにしては本末転倒になってしまう」と悩み、この問題を解決するために「オーガニックカフェ併設のヨガスタジオ」が誕生、きせきの食卓がうまれました。
手間・ひま・愛情を惜しまない「きせきの食卓」
きせきの食卓には8つの約束があります。
- 塩は天然塩
- お米は無農薬無肥料
- お野菜は9割以上が無農薬
- お肉は遺伝子組み換え飼料を使わない国内産
- 油は国産菜種油・ごま油・オーガニックオリーブオイルまたはココナッツオイル
- 調味料はすべて無添加
- 白砂糖不使用
- キッチンに電子レンジ、電磁調理器はありません。
この約束を守り抜くためには大変な労力が要るだろうなと考えてしまいましたが、きせきの食卓のスタッフさんたちはそれ以上に、手間ひまをかけることにこそ愛情を惜しまないと言います。
運営会社の山崎さんは、「意識せず自然体で手間・ひま・愛情を惜しまない動きをしてくれるきせきの食卓スタッフを本当に尊敬しています」と言います。
こちら当日いらっしゃった、笑顔が素敵なスタッフさん。
スタッフさんたちの笑顔や心配りの言葉のひとつひとつにそれがあらわれていて、訪れたこちらまで温かい気持ちになります。
入り口下の看板には
「カラダは食べものでできている。食べものはいのちでできている。命はいのちに支えられている。
健康は目的ではなく手段。多くのいのちに支えられている命を活かし、好きなことをして、ご縁のある方々に喜ばれて楽しく生きる。そのためには、健康なほうがいい。
便利・簡単・手軽<<手間・ひま・愛情
次の世代、その次の世代、さらにその先にも、安心安全美味しい楽しいありがたい…を伝えたい。だから手間ひま・愛情は惜しみません!
小さな僖びを積むことができる人に僖積(きせき)がおきる」と書かれています。
便利さを追求する現代、人の手が手間ひまかけて手づくりするご飯を食べられる機会は減ってしまいました。手軽で早く空腹を満たせるファーストフードや、電子レンジを使えば便利な冷凍食品も進化を続けています。
そんな中、手間ひま・愛情を惜しまない、手づくりで心のこもった温かいご飯をいただけるのが、ここ「きせきの食卓」です。
「毎日食べたい!」がここにある。海・山・畑のオーガニックランチ
席に座ると、美人水という美味しいお水とともに、丁寧なメニューの説明を聞かせてもらえます。
ランチメニューはメインが選べるAランチ、Bランチ、Cランチの3つがあり、このほかにきせきのスープ・サラダランチ(850円)もあります。
基本となるAランチ 1,250円
- 小鉢/自然栽培にんじんのラペ
- 今週のメイン料理 畑・山・海のいずれか
- お野菜料理2品
- 自然栽培玄米
- 重ね煮のお味噌汁
ここに+200円から食後の飲み物を付けられます。
Aランチ+aなBランチとCランチ
Bランチは上記のAランチに、オーガニックグリーンサラダかきせきのスープどちらかが付いて1,450円。
Cランチは、Aランチにオーガニックグリーンサラダときせきのスープ、デザートと食後のドリンクがすべて付いて2,250円です。
メニューは一週間ごとに新しく変わり、月曜定休のため毎週火曜日から新メニューになります。
この日のメイン料理は
- 畑 季節野菜のグリル 甘味噌ソース
- 海 さわらの塩麹焼き
- 山 鶏と聖護院大根の照り煮
どれも美味しそうで迷ってしまいますが、「山」の鶏と聖護院大根の照り煮をお願いすることにしました。きせきのスープを飲んでみたいのでBセットで注文。
選ぶメイン料理によって付いてくる野菜料理2品もそれぞれ違うので、毎日全ての組み合わせを食べに来たくなります。
メインに合わせた野菜料理の組み合わせだけでなく、その時その時に獲れた無農薬野菜や入荷できる食材によって、素材を活かして美味しく食べられるメニューを毎週新しく考えているため、その週によって食べられるものは変わります。
オーガニックの安心安全な素材と、手間ひまを惜しまず人の手で作られた、心のこもった温かいごはん。「毎日食べたい!」がここにあります。
木のぬくもりを感じるお盆いっぱいにBセット「山」のごはんが運ばれてきました。
メインプレートには、器に盛られた鶏と聖護院大根の照り煮の両サイドに野菜料理が2品。小鉢には有機にんじんのラペ、木のお茶碗には山盛りのほかほか自然栽培玄米ごはんと、別添で自家製の無農薬緑茶塩のふりかけ。湯気の立ち上る重ね煮のお味噌汁に、きせきのスープ。
木曽ひのきのおはしでいただきます。
つけあわせ野菜料理1品目はキャベツと白菜のごま塩麹あえ。
しんなりし過ぎないキャベツのコリコリした食感と優しいすりごまのまろやかな味わいが美味しい塩麹あえです。
2品目はほうれん草のお浸し。シンプルなしょうゆ味で、シャキシャキした有機ほうれん草の素材本来の美味しさを味わえます。
メイン「山」の鶏と聖護院大根の照り煮は、大きな鶏が均一に柔らかく、しっかり目の味付け。聖護院大根もじゅわっと味がしみていて、ごはんがすすむ美味しさです。
小鉢の有機人参のラペにはつぶつぶしたクミンシードが入っていて、香りと食感だけでなく味に奥行きを与えています。ほのかな甘味は甘酒によるもの。きせきの食卓では精製された白砂糖を使わず、甘味は玄米の甘酒と素材本来の甘さのみにこだわります。
自家製のふりかけは、無農薬栽培の川根茶とわじまの海塩を混ぜたもの。玄米ご飯にかけていただきますが、そのまま味わっても濃厚な茶葉の香りが噛むごとに口の中に広がり、まろやかな海塩と合って絶妙な味わいです。
完全オーガニックのお茶は非常に貴重で、全体の3%くらいと言われていますが、この川根茶を栽培している三谷さんの畑では、30年間一切農薬を使っていないとのこと。
最初の数年は害虫のために収穫ができない年もあったそうですが、ぐっと耐えて無農薬栽培を貫くうちに、樹が丈夫になり、害虫の天敵であるクモなどが増え、完全無農薬の茶葉が収穫できるようになったそうです。この三谷さんの努力の賜物である貴重なお茶は、ポット(400円)でいただくこともできます。
また、この茶塩にも使われているわじまの海塩は、釜炊きせず海水の上から熱を当て、40度未満の低温で穏やかに結晶化しているため、素材に素早く浸透し、発酵を促しうま味が生まれるそうです。
精製された食卓塩とは全く違い、身体のミネラルバランスにとても近いこの海塩は、きせきの食卓の料理全般に使用され、素材のうま味を引き立てています。
そしてなんといっても特筆すべきは自然栽培玄米と、重ね煮のお味噌汁の美味しさ。
自然栽培玄米は、見た目もふっくらツヤツヤでもっちりして見えますが、食べてみるとまた感激。「えっ?これが玄米100%?」と驚きのモチモチ感です。
玄米特有の硬さやパサパサ感、酸っぱさを一切感じません!
個人的に、食物繊維やビタミン・ミネラルが豊富な玄米食に自宅で挑戦してみたことがあるのですが、手間がかかることはもちろん、玄米特有のパサパサした硬さと後味の酸っぱさに長く続けられなかった経験があったので、この玄米には本当に驚きました。
ふっくらモチモチでクセや臭みをまったく感じない、おいしい白米を食べているのと変わらないこの玄米は、無農薬無肥料の「ササニシキ」と「亀の尾」という稀少品種。長野県安曇野の山田さんが丹精込めて育てています。
浸水時間を長くとり、ガス釜で炊き上げた栄養満点の玄米は、噛めば噛むほどお米本来の甘味とうまみを感じられます。
たまねぎ・しいたけ・にんじんの重ね煮に、天然醸造の無添加生みそをといたお味噌汁は、野菜本来の自然な甘みと深いこだわりみその味わいを感じられる、ほっと温まるお味噌汁です。
重ね煮とは、化学調味料も砂糖も一切使わずに、野菜を塩と野菜の水分だけで重ねて煮る、日本古来の煮物の仕方。本来、野菜が持っている自然の甘みとうまみを最大限に引き出し、自然のめぐみをまるごといただくことができる調理法です。
そこへオーナーさんの北海道の実家でつくっている無添加の美味しい生みそを合わせました。このこだわりの生みそは、本州ではほとんど見かけることができませんが、店頭で購入(500円)することができます。気に入った方は自宅でも、重ね煮のお味噌汁に挑戦してみてはいかがでしょうか。
最後に、初めての食感に驚きの「きせきのスープ」。
今週はじゃが玉ごぼうのスープです。
見た目は泡立っていてなんとも不思議ですが、一口飲んで「スープ?!?」とさらに頭が混乱します。
スプーンですくい上げるとふわっふわ。スープというより熱々のムースといった印象で、これが本当に美味しいので驚きです。ふわふわの口当たりとほんのりごぼうの香りが広がる優しいまろやかな味わいで、ブラックペッパーがアクセントになっています。
カラダは食べたものでできている
「カラダは食べたものでできている。食べものはいのちでできている。命はいのちに支えられている。」これがきせきの食卓のコンセプト。
忙しい毎日の中で忘れてしまっている、大切なことです。
飽食の時代である反面、飢餓や貧困の問題も依然消えることはなく、環境問題も深刻なこの時代だからこそ、きせきの食卓には、このコンセプトをたくさんの人に伝えたいという切なる願いがあります。
私たちひとりひとりが、自分自身の「食」を見直すこと。
それが世界中の飢餓・貧困・環境問題を解決することに繋がっていく第一歩になる。そんな思いを話してくれました。
「食べられるということは、言葉で言い表せないほど、本当はありがたいことなんですよね」と穏やかな笑顔で言う山崎さんは、「だからこそ、あまり食に興味が無い方、当店を知らない方にも訪れて欲しい」とのこと。
身体に優しいご飯に気を付けている方はもちろんのこと、食の安全やオーガニックにあまり興味がない方、インスタントやファーストフードに慣れている方にもぜひ味わってみて欲しいきせきの食卓のごはん。
カラダは食べたものでできていること、食べものはいのちでできていること、命はいのちに支えられているということ。いつの間にか忘れてしまった大切なことを実感できるはずです。
「きせきの食卓」の取材を終えて
心と身体にじんわり優しくしみ込むような、お腹も本当の意味で「満たされる」ご飯。
なんてありがたいご飯をいただいたんだろう。自然に手が合わさり「ごちそうさまでした。」と、身体に力を与えてくれたいのちに感謝の気持ちが沸いてきます。
手間ひまを掛けてくれたキッチンの方、丹精込めてこだわりの安心安全な食材を作ってくれた生産者の方の努力にまで感謝の思いを馳せると、このひとつのお盆にどれだけの人の手と温かな思いといのちが詰まっていたのかと思いました。
「お気を付けてお帰りくださいね。本日はお越しいただきありがとうございました。」と笑顔で送り出していただき、至れり尽くせりとはこういうことだなと、幸せな気持ちをおみやげにお店を出ました。
忙しいとき、疲れたとき、外食の濃い味やインスタント食品に飽きたとき、身体に優しい温かなご飯が食べたくなったら、元町にあるきせきの食卓へ足を運んでみて下さい。
心も身体も元気になれる、しあわせごはんが待っています。
「きせきの食卓」の店舗情報
きせきの食卓は横浜元町商店街の「ZALETTA元町Ⅰ」という建物の3F。
1FにあるENOTECAとHENCKELSが目印です。
店舗名 | きせきの食卓 – 元町・中華街駅すぐそばのオーガニックカフェ |
住所 | 〒231-0861 横浜市中区元町二丁目93番 ZALETTA元町Ⅰ 3F |
営業時間 | 10:00~20:30(月曜定休) |
電話番号 | 045-264-9678 |
URL | 公式サイト |